第3号 |
保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の
所得税の取り扱い(詳細版) |
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銀行の不良債権の処理が厳しくなるにつれ、債務者が支払不能に陥り、保証人が金融機関等から代位弁済を迫られる場合が増加しています。仕方がないから、昔から持っていた土地でも売って、債務の弁済に応じようかと考えている方、必見です !! |
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1.保証債務の履行とは |
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保証債務の履行とは、民法上の保証人、連帯保証人による債務の履行があった場合だけでなく、次のような場合も含まれます。 |
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不可分債務の債務者の債務の履行があった場合 |
A |
連帯債務者の債務の履行があった場合 |
B |
合名会社や合資会社の無限責任社員による会社の債務の履行があった場合 |
C |
身元保証人の債務の履行があった場合 |
D |
他人の債務の担保に質権または抵当権を設定した者がその債務を弁済した場合または、質権または抵当権を実行された場合 |
E |
法律の規定により連帯して損害賠償の責任がある場合において、その損害賠償金の支払があったとき |
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2.保証債務を履行すれば良いというものではありません |
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債務の保証をしたとき、主たる債務者が資力を喪失して弁済不能の状態でないことが要件です。 |
A |
また、当然のことながら債務の保証は、資産の譲渡前に行われていなければなりません。 |
B |
債務の弁済は、主たる債務者が弁済不能に陥り、債権者から保証債務の履行を求められた後に行われなければなりません。 |
C |
また、余剰資金があるからといって、先に保証債務を履行した後で、資産を譲渡した場合にはこの規程は適用になりません。ただし、借金をして債務の弁済に当て、その後、資産を譲渡した代金でその借入を返済した場合は OK です。くれぐれも順序を間違えないように !! |
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3.農協からの借入は? |
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他人のために農業協同組合等から借入を行い、その借入金を返済するために資産の譲渡をした場合に、次の各要件すべてに該当する場合には、保証債務を履行するために資産の譲渡があったものとして取り扱われます。 |
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実質上の債務者が農協等の組合員でないため、その組合から資金の借入ができないので、その組合の組合員がその資格を利用してその組合から資金を借り入れてこれを実質上の債務者に貸し付けた場合のように、その借入及び貸付が債務を保証することに代えて行われたものであること。 |
A |
実質上の債務者が、その貸付を受けるときにおいて、資力を喪失していないこと。 |
B |
名目上の債務者が借入れた資金を、その借入を行った後直ちに実質上の債務者に貸し付け、自分で運用した実績がないこと。 |
C |
名目上の債務者が、その貸付に伴い実質上の債務者から利ざやその他金利に相当する金銭等を受け取っていないこと。 |
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4.求償権の行使不能の判断は? |
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求償権が行使不能かどうかの判断は、貸倒れ損失の取り扱いに準じます。 |
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金銭債権の全部または一部の切捨てをした場合 |
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@) |
会社更生法もしくは金融機関等の更生手続きの特例等に関する法律の規定による再生計画認可の決定または民事再生法の規定による再生計画の認可の決定があったこと。 |
A) |
商法の規定による特別精算にかかる協定の認可もしくは整理計画の決定または破産法の規定による強制和議の認可の決定があったこと。 |
B) |
法令の規定による整理手続きによらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより切り捨てられたこと。 |
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イ) |
債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの。 |
ロ) |
行政機関または金融機関その他第三者の斡旋による当事者間の協議により締結された契約でその内容がイ)に準ずるもの。 |
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C) |
債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合においてその債務者に対して債務免除額を書面により通知したこと。 |
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A |
事実上の貸倒れ |
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その債務者の資産状況、支払能力等から見てその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その全額が求償権の行使不能額となります。この場合において、その金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ回収不能とすることができません。 |
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5.譲渡がなかったものとみなされる金額は? |
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譲渡所得の金額の計算上、譲渡がなかったものとみなされる金額は、次のいずれか低い金額に達するまでの金額となります。 |
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求償権が行使不能となった金額 |
A |
この規定適用前のその資産を譲渡した年分の総所得金額(申告分離課税の各種所得を含む)、山林所得金額及び退職所得金額の合計額 |
B |
Aの金額の計算の基礎となった譲渡所得金額 |
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6. 求償権の額に含まれるものは ? |
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主たる債務 |
A |
主たる債務にかかる利息、違約金等 |
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*訴訟費用、弁護士費用、不動産鑑定料等、及び、借入金で保証債務を履行した場合のその借入金の利子は求償権の額には含まれません |
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7. この規定の適用を受けるための手続きは ? |
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確定申告書(分離課税用)第三表の「特例適用条文」欄に「所法64条2項」と記入。 |
A |
保証債務の履行のための資産の譲渡に関する計算明細書に一定の事項を記載して確定申告書に添付。 |
B |
その他この規定に該当することを証する書類を添付して提出する必要があります。 |
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