最近の不景気により、赤字企業が増え、法人税の課税所得が0の法人も多い。税金が出ないから税務調査がないかといえば、そうでもない。
まず、消費税の課税事業者であれば、消費税の調査がある。簡易課税であれば、経費を相殺されて入金した売上の計上漏れをチェックする。本則課税であれば、売上の漏れだけでなく、経費の課税非課税のチェックを行う。支払手数料として経理していたものの中に接待費とされるものが含まれていないかも要注意だ。たとえば、紹介手数料。顧客を紹介してもらった場合、いくらとか、何%とかの紹介料を支払いますということが、開示されていなければ、それは、ただの贈与でしょということになる。そうなると、消費税も控除できない。
また給与の支払いも要注意だ。役員であれば、経営責任の対価、とはいえ、同族企業など、自分で自分の給与を決めるわけだから、たぶんに恣意性が入り込む余地がある。したがって、税法において、過大役員報酬だの、役員賞与の損金不算入だの、損金算入に制限を設けている。ただ、役員であれば、労務の提供の対価ではないので、企業においての勤務実態は問われない。
従業員に対する給与は、労務の対価なので、企業において勤務実態がない場合には、たとえ従業員だといっても給与とはみなされない。タイムカードや、出勤簿、現場に出ている場合などは出面帳などの資料から実際に勤務しているかどうか、そして、聞き取り調査でどういう内容の仕事をしているかを確認する。勤務実態がない場合には、その人に対する貸付金、あるいは寄付金または接待交際費として全額あるいは限度額を超えた部分が課税の対象となる。
接待交際費もねらい目の科目である。接待交際費の定義は、法人がその得意先、仕入先、その他事業に関係のある者等に対して、接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいうとなっている。相手先、費途共に規定されているから、支出した相手がわからなければ接待交際費としてすら認めてもらえず、最初から損金不算入である。さらに積極的に支払先を秘匿する場合には、使途を秘匿した支出額に対し40%の特別税率が加算されることになる。また、渡し切り交際費のように、役員や従業員に対して、精算を要しない金銭の支払は、これらの者に対する臨時の給与となり、役員に対するものは役員賞与として損金不算入の対象となる。
報道によると、外務省や、社会保険庁その他の省庁で、取引業者に高い金額で発注させ、一部をキャッシュバックさせたり、業者にプールさせたりして裏金作りに励んでいたということだが、相手業者は、どのような会計処理や税務申告をしていたのか…。税の無駄遣いが指摘されて久しいが、無駄遣いと同時に民間企業をも苦しめ、さらに国際的には日本の官庁、企業の信用を失墜させることにもつながるので、早急にやめてもらいたいものである。
また、かつて、外交機密費が問題になっていた頃、首相の外遊に付いていく国会議員や官僚に“餞別“なるものが外交機密費から支払われていたということだが、これなども、れっきとした渡し切り交際費、つまりは給与なので、支払われる際には当然所得税が源泉徴収されるべきだと思うが、そのあたりの経理と納付はどうなっているのか疑問に思うところである。
ちょっと横道に逸れたが、交際費とその周辺科目は、税務調査では必ずチェックされるところであるから、注意が必要だ。 |