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消費税の税率を上げたらどうなる?

消費税は誰が負担する?

 消費税は、平成 16 年度予算で 9 兆 5 千 6 百億円の歳入が見込まれており、予算ベースで法人税を若干上回り、所得税に次ぐ重要な税目となっている。毎日、買い物をするたびに消費税がかかっているので、誰でも消費税という名前は知っている。しかし、その仕組みはいまいち理解されてないのではないかと思う。

 消費税は間接税である。間接税というのは、税の負担者と実際に税を納める者が違う税のことである。私たち消費者が商品を購入すると、そのときに価額の 5 %分の消費税を商品価額に上乗せして事業者に支払う。事業者は、消費者から預かった消費税から、その商品の仕入にかかった消費税だけでなく、店舗維持のための家賃から接待のための飲食代にいたるまで自分が支払った消費税すべてを差し引いてその残額を国等に申告納税する。ただし土地の譲渡や病院の社会保険診療報酬のように消費税が非課税の売上を得るために支払った消費税は原則として控除できない。すなわち、消費税を負担するのは消費者と、非課税売上が多い一部の法人や個人事業者、あるいは免税事業者だけで、大多数の法人等はまったく消費税を負担していないのである。

また、消費税は国内消費に対して課せられる税なので、国外に輸出する場合には免税となる。さらに輸出商品の価額に、日本の国内で課せられた消費税額を転嫁することはできないという理由で、輸出売上は非課税売上を含めて全て 0 税率の課税売上として扱われ、輸出業者は、国内で支払った消費税全額の還付が受けられるのである。

ヨーロッパなど、消費税先進国では、消費税は最終消費にかける税だということで、法人であっても、他に転売せず、法人自身が消費する部分は、最終消費として税額控除を認めていないそうである。日本の消費税は、基本的に個人消費者が負担する税だという位置づけのようである。
消費税は誰が負担する?


家計に与える影響は?

公的年金の国庫負担等の財源のために、消費税の税率を上げる議論が与野党問わず盛んである。大企業の業績が回復したことをもって、景気が回復したとして、安易に消費税率を上げるとどのような影響があるのだろうか?
  まず、消費税は基本的に、消費者≒個人が負担する税である。消費税率の増加は、物価の上昇となって、家計を直撃する。今回の景気回復に貢献した企業の人的リストラ、正社員から、契約社員、派遣社員、パート、アルバイトへのシフトにより、個人所得は減少している。公的年金制度の改正や税制改正により、今後社会保険料や個人所得税の負担は増加の一途をたどる。おかげで、個人の可処分所得は毎年減少していく。ここへ持って来て消費税の増税である。
個人は、可処分所得の範囲でしか消費できないから、消費税の増税による物価の上昇に対して、単価の安い商品を購入するか、購入する数量を減らすかのいずれかの対応をとるしかない。特に低所得者層にとって、生活必需品の値上がりは痛手である。
逆に高額所得者にとって、消費税は、合法的に負担を回避できる税である。負担したくなければ、物を買わなければ良いのだから。昨年夏のアテネオリンピックフィーバーの後、それまで自分の任期中は絶対消費税を上げないと言い張っていた小泉首相の姿勢が少し変わって、任期が終わったら消費税率を上げるので、今からそれに向けた議論を煮詰めていってくださいとなったとたん消費が落ち込んだのは、オリンピック景気の反動だけとは言い切れないだろう。消費税が上がるのかと思ったとたん、物を購入する意欲が失せたのは私だけではないと思う。



景気に与える影響は ?

 最近の景気の上昇は、主に中国を中心とした輸出の増加によってもたらされたものであり、国内の特に家計部門の消費にはそれほど顕著な伸びは見られないというのが大方の見方である。逆に、雇用の不安定化と年金財政の悪化による将来への不安から、財布の紐は固くなっている。

 このような状況で消費税率が上がれば、事業者にとって消費税を商品やサービスの価額に転嫁できるのかという問題が出てくる。平成 16 年 4 月から始まった総額表示義務もこれに追い討ちをかける。本体価額プラス消費税であれば、これは消費税の上昇分だと分かるが、総額表示であれば本体価額の値上げなのか消費税の上昇分なのか分からないし便乗値上げだと勘ぐられるかもしれない。消費税を商品価額に転嫁できなければ、結局は事業者が消費税を負担する結果となる。

 個人の可処分所得がどんどん減少している現状では、たとえ消費税を商品価額に転嫁できたとしても、税込売上の総額が伸びることは考えられない。結果として消費税が上がれば小売やサービス業者の利益が減少し、事業の縮小、廃止が相次ぐことになるだろう。

このたび、産業再生機構の元で再建の途についたダイエーも、食品小売に的を絞って復活を目指すというが、市場が縮小している中での新規出店は過当競争を促し、小売業界にとってはマイナスの効果しかないのではないかと思う。


小売市場の変化 小売市場の変化

 一方で、ネットによる個人間の取引が増加する傾向もある。最近の若い子達は不要になった衣類や小物を簡単にネットでオークションにかけ、売買している。携帯電話の I-mode 機能の拡充、パケット料金の定額制も、 I-mode によるネット取引の拡大に貢献している。代金引換で売買すれば、売上代金の取り逸れもない。また、これらの取引は、消費税とは縁がない。個人間で不用品を売買するだけなので、事業性がないため消費税の課税事業者になれないから、消費税の納税義務もないのである。個人所得税にしても、生活用動産の譲渡は非課税なので、何の税も課せられない。もっとも、大概は、買値よりも大幅に安い金額でしか売却できないのであるが。

 しかし、このような市場が拡大すれば、今までどおりの小売業は廃れてくる。特に、ブランド品の中古市場は痛手を被るのではないだろうか ? 昨年相次いで日本に進出したヨーロッパのブランドも、 2004 年は思ったほど売上は伸びなかったそうだ。


消費税増税の前に考えること

 今後の年金給付が保険料の収入で間に合わないといって、安易に年金保険料を上げたが、平成 17 年度もまた 1,000 億円もの事務費を厚生年金と国民年金の保険料で賄う決定がされた。社会保険庁の無駄遣いはつい最近まで毎日のように新聞で報道されていた。社会保険事務所で棚の上に眠っているパソコンも、使われないプリンターも、割高な金額の金銭登録機も、みんな私たちの保険料である。こんなに無駄遣いをしなければならないほどお金が余っているのにさらに消費税まで上げて補わなければならないのかと不思議である。

 2004年以降、所得控除額の引き下げ、定率減税の廃止等、個人の税負担の増加が著しい。それでも足りないといって更に消費税まで上げようとしている。政府は、国民負担の増加に見合う歳出削減の努力を行ったのであろうか ? 年金制度の一元化は本当に実現するのだろうか ? 特殊法人の改革は進んでいるのだろうか ? 道路公団に続いて郵政民営化も族議員に押されて骨抜きにされてしまうのだろうか ? 莫大な国債の発行はこれからも続くのだろうか ? 大阪市に見られるような職員の厚遇はどこの自治体でも多かれ少なかれ行われていると思うが、どこまで見直されるのであろうか ? 政府は、どの段階になったら、歳出削減の取り組みに本腰を入れるのだろうか ? 国民の疑問には、これらの改革で利権を失う関係者の抵抗で答える。いい加減にしてほしい。

増税して税の取立てが厳しくなると必ず税の逃亡が始まる。消費税を増税しても景気が悪化し、納税義務者の資金繰りが悪化すれば、滞納が増えるだけだし、最近流行の売掛債権を差し押さえるなど強硬な取立てを行えば、事業者が倒産して結局滞納税額は回収不能となるだけである。そうなると国民の活力も失われ、地方自治体だけでなく、国までもが再建管理団体になるかもしれない。

まずは、歳出の無駄を省くことと、公平で公正な課税を実現することが急務ではないか ?

 
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