国や、地方公共団体も消費税法の適用対象だって、ご存知でしたか
? 一般会計は、さすがに、「課税売上にかかる消費税額と仕入れ控除税額を同額とみなす」という規定があるので申告義務はないのですが、特別会計は、ちゃんと消費税の申告をして納税しなければならないのです。
ところで、そういうところが消費税を納税してくれるのは別にかまわないのですが、国、地方公共団体、これらに準ずる法人として税務署長の承認を受けた公共・公益法人等(以下、国、地方公共団体等という)にあっては、『資産の譲渡等又は課税仕入の時期について、その対価を収納すべき又は費用の支払をすべき会計年度の末日に行われたものとすることができる』という特例があるのです。これは、たとえば、平成
17 年度(平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日まで)の予算に計上された工事であれば、平成
18 年 3 月に発注して引渡しを受けるのが平成 18 年 6 月であってもこの工事の課税仕入等の時期は
18 年 3 月 31 日とすることができるということです。
税率が変わったときなどには、必ず経過措置が設けられて、前回 3 %から 5 %に上がったときも、施行日の前年の
8 月 31 日までの契約にかかる資産の譲渡等について施行日以後に引渡しが行われた場合でも旧税率で消費税を計算することができました。これは契約の当事者双方に適用されるので、一方では課税売上、他方は課税仕入となり両方旧税率で納税又は控除ができるので問題はありません。
ところが、国又は地方公共団体等との契約では、たとえば、平成 20 年の 4 月 1 日に消費税率が
5 %から 10 %に上がったとすると、平成 19 年度(平成 19 年 4 月 1 日から平成 20
年 3 月 31 日)の年度予算の中で発注した公共工事等については経過措置とはかかわりなく公共工事等の完成引渡しが平成
20 年 4 月 1 日以後になっても平成 20 年 3 月 31 日にその課税仕入が行われたものとして、消費税率は旧税率
5 %で発注されてしまいます。ところが、受注した民間企業の課税売上の時期は実際に資産の譲渡等を行ったときすなわち資産を引き渡したときなので、経過措置の適用がなければ新税率
10 %で課税売上に対する消費税額を計算しなければならなくなってしまいます。 5 %上乗せされた税込み総額を
10 %の税率で割り戻すので、単純に 2 倍の税額を支払うことになるわけではありませんが、中小の事業者にとって、これは大変な負担となります。
仮に、国、地方公共団体等の課税仕入等の時期に合わせて、課税売上の計上を前倒しすると、取り掛かってもいない工事の売上を先に立てなければいけないこととなり、損益計算書がいびつになってしまいます。また、入金もずっと先で、その課税売上に対する課税仕入もまだ発生していない可能性もあり、とんでもない資金負担を強いられることとなるので現実的ではありません。
前回、消費税を 3 %から 5 %に上げたときに同じ問題が発生したので、その後何か手当てされたかと思い、税務署に確認してみましたが、なんらの手当ても行われていないとのことでした。
歳出削減はまだ道半ば、にもかかわらず毎年毎年上がっていく社会保険料、所得控除の見直しや定率減税の廃止により一気に上がった所得税と住民税、さらに介護保険の利用も制限され、老人の在宅介護の奨励による施設からの追い出しなど国民の負担は増えるばかりです。このような中でさらに消費税まで増税するのは到底賛成できることではありません。
しかし、今後の政局により消費税が増税されるかもしれない。そのときには、更なる追い討ちをかけるようなこの特例に対し、経過措置ででも良いので、公共工事等については、発注元で適用した税率で受注企業の課税売上の税率を計算するよう明文化した措置を設けて対処していただきたいものです。
消費税の増税によって深刻な影響を受けるのは、年金生活者のお年寄り、低所得者、そして、商品やサービスの価額に消費税をなかなか転嫁できなかったり、転嫁できてもその分売上が減少してしまう中小の下請け業者や小売業者です。
年金にしても、年金積立金の運用益が出たの今期は運用損になったのと新聞等で報じられていますが、何のための年金積立金なのか
? 少子高齢化が進み現役世代のみで高齢者の年金を支えきれなくなったときに取崩して年金の給付に当てるためのセイフティーネットではなかったのでしょうか
? 国債や株式に投資して運用益が出たとしても本来の目的である国民への年金の給付に使われなければ何の意味もありません。民主党は、年金の財源のために消費税を増税するといっていますが、とんでもない話です。
日経ビジネスの 2006 年 9 月 4 日号に、竹中平蔵総務大臣が「消費税引き上げに待った」と題して特別寄稿されていましたが、その中で「経済の名目成長率を長期国債の利率よりも高く保てば、消費税を増税しなくてもプライマリーバランスの黒字化は達成できる。さらに、消費税を増税して経済成長率が下がれば更なる消費税の増税が必要となり、悪循環に陥る。」と謳っています。全くそのとおりだと思います。
消費税の増税が避けられないという既成事実作りに財務省もマスコミも躍起になっているようですが、決してそんなことはありません。消費税の増税を考える前に、官庁内部の無駄を省く形で歳出削減をきっちり行っていただきたいと思います。
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