政府と自民党は郵政民営化についての攻防で国民そっちのけの議論を白熱させている。民営化反対議員たちは、民営化してしまえば過疎地のサービスが真っ先に打ち切られる、国民に対する全国一律のサービスが不可能になる、だから国の関与が必要だと反対の理由を説明する。値段は違っても、過疎地であれ離島であれ、民間の宅配便は届くし、メール便は届くし、逆に言えば郵便局の体質だから民営化すれば過疎地には郵便を届けられなくなるのかと思ってしまうような説明である。
本命は、政府の膨大な資金源であり、国債の引き受け先でもある郵貯と簡保の処遇であろう。この資金が市場に放出されれば、金融市場が大混乱に陥るだろうと雑誌や書籍で色々議論されている。郵貯、簡保の資金を民営化前の旧勘定と、民営化後の新勘定に分離し、旧勘定は政府の手元に残して管理するという点についても、政府が自由にできる資金を残しておくとまた好き勝手に使われてしまうのではないかと危惧する向きもある。
貯金や、保険は、預ける側からすれば資産だが、郵政側からすれば負債である。新旧勘定に分離する際、負債の残高に見合った資産も当然分離移管されるだろう。分離される資産の内容まで論じられていないが、ここに財政投融資への貸付金を持ってくればどうなるか?郵貯の定額貯金は最高10年、簡保でも20〜25年のうちには満期が来るので、素直に考えれば今後10〜20年の間にはこの旧勘定の預金はほぼ全額取り崩されると思われる。財政投融資の貸付金がそっくり返してもらえるとは思われないので、解約、満期又は保険事故発生時の返戻金の資金は国債の新規発行又は税の投入で賄われるだろう。郵政公社のままにしておけば、郵貯や簡保から大量の資金が流出した場合、財政投融資への貸付金の焦げ付きが表面化する可能性があるが、別勘定で政府が管理すればこれを表面化させないで済ませることができるかもしれない。このようなことにならないよう、旧勘定の処理の内容が国民に情報開示されるようなシステムを作らなければならないだろう。
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